お見舞い

祖母のお見舞いに行った。
祖母は11月の初めに体調を崩し入院している。


あまり容体はよくなく、クリーンルームといういわゆる無菌室に
近い所にいる。
食事もとれず、点滴が命の綱だ。
1週間前より、さらに痩せた様子だったが今日は顔色もよく、
少しだが話すこともできた。


痩せっぽっちでちっちゃくなってしまった祖母だけど、やっぱり
綺麗だなぁとつくづく思った。


祖母は昔から本当に美しい人だ。
若い頃学校の先生に宝塚へ行くのを勧められたというのが祖母の自慢だ。
私も小学生だった時、敬老参観に来てくれる祖母が自慢で、「おばあちゃんに
似ているね」と言われるのが何よりも嬉しかった。
いつも朝一番に綺麗にお化粧をし、誰がいつ来てもいいようにきちんとした
服装をしている。
革のタイトスカートだってピンヒールだって嫌味なく、上品に履きこなして
いつも背筋をピンと伸ばして、実年齢よりかなり若く見える。
料理も上手で、祖母のバラ寿司は誰にも真似できない。
厳しい面や我が儘なところも多分にあるけれど、いつも本当に華やかで、
常に女だ。


そんな祖母の唇が乾燥でささくれているのを見るだけで、今のしんどさ
が胸に突き刺さりそうになる。


医師から覚悟をするようにと伝えられたからには、もう家には帰ることは
できないのかもしれない。
バラ寿司の作り方をちゃんと教えてもらってないのに。
さいころ聞いた、祖母の自慢話も半分忘れてしまっているのに。
後ろ向きな気持ちや悲しさに飲み込まれそうになる。
でもそれって、うまく言えないけれどエゴだ。
ここにこうして書き残そうとしていること自体がエゴだと思う。


まだ祖母はここにいて、話だってできる。
今日、太刀魚を一緒に食べようねと言うと、微笑んで頷いていた。
後悔したり悲しむのは違う。


これからの思い出をたくさん作ろう。
息子は病室には入れないため限られた時間だができる限り通おう。
そう思う。